「探究の時間」と教師のマインドセット 〜エキシビションに向かって〜
ホロコーストミュージアムのインパクトがとてつもなく大きかったことは前述の通り。
norainnorainbows1718.hatenablog.jp
その中でも、冒頭の写真の引用句が一番私の心を掴みました。
「This Museum is not an answer. It is a question.」
ちなみに、私流の翻訳だと、「この博物館が語っているのは答えではなく、問いである」となります。本校の探究の時間のセントラルアイディアにとても良く似ていると思ったから、印象的だったんだろうな。
主に日本の歴史について探究するユニットでは、歴史を学ぶのではなく、歴史から学ぶということをとても重要視しています。まさに、歴史がどんなことを私たちに問いかけていて、それをこれからにどうつなげていくかという探究。
私はこのユニットを2年続けて担当しましたが、大好きなユニットの一つです。子どもたちの歴史に対する見方がガラッと変わります。子どもたちが「自己選択・自己決定」をかなりの範囲で行使できることも気に入っている理由の一つ。そして、やっぱり概念学習ってこういうことだよなぁと何度も実感できる醍醐味も。
が、しかし、このユニットは教える側にとっては、自分のマインドセットの試金石。けっこう、ハードルが高いようです。子どもたちの「歴史的事実の暗記」という知識に偏りが出てしまうことが、どうしても気になってしまう人には苦しいかもしれません。「社会科の教科書に載っていることは全部教えなくては・・・!!」という人にも。
教師側の心持ち一つで、「探究の時間」があっという間に「社会科」に早変わりなんていう悲しいことが起こってしまうのです。
どのようにしたら教師のマインドセットの変化を促せるのか?
ルームメイトと話していても、お互いに具体的な実践のエピソードになると必ずそこが課題として浮き彫りになります。彼女の学校はもう20年近くPYP校として実践を続けているにも関わらずまだこの問題があるんだなーと思うと安心するやら、不安になるやら・・・(笑)まぁ、結局いつも「It's a process.」「It takes time...」と彼女が言って、話は続いていく。それでも、二人で校内研修についてあーでもない、こーでもないとアイディアを出し合うのは楽しいです。
さて、本校では年度終わりのエキシビションに向けての準備が着々と進んでいます。エキシビションとは6年間の学びの集大成をお祝いする発表会とそこまでのユニット全体をさします。グループ探究と個人探究の融合で、PYPの学びの要素を理解し、それを活用できるようになったこと、つまりは「自分で探究のサイクルを回せるようになった」ことをお披露目するわけです。
初年度なので、当然手探り。私たちは子どもの順応性の高さに完全に置いていかれていることも・・・。もちろん、ここに来て手応えを感じ始めた教師もいます。今までの積み重ねが、彼の中でなんらかの意味をもってつながってきたのだと頼もしく感じています。
こちらに来てからも、オンラインで週に1回は担当のグループの子どもたちとミーティングをしています。夏休み明けまでは、あくまでも助走期間。今ある問題意識の種をいろいろな角度から検討する。そのお手伝いが私の役割です。夏休み中にいろいろと調べたり考えたりした結果、トピックがガラッと変わってしまったっていいんです!!むしろ、予備知識がほとんどない中で決めたトピックやテーマのまま突っ走れるわけがない。子どもたちが知らないうちに自分たちでレールを敷きすぎないように、ほどよくツッコミを入れる。
そんなやりとりはとても面白い。子どもたちの頭の上で電球がピカッと光るのが見える!そんな感覚に陥ることさえあります。
でも、ここも教師のマインドセットによって左右されてしまう可能性があります。
「子どもたちへのフィードバックはこれで正しいのですか?」
「このワークシートの記入例を出してもらわないと困ります!」
こういうふうに訴えてくる先生方が本当に必要としていることはなんなのか・・・。
ここでの学びも活かして考え続けたいと思います。